音大生と経営者

音楽にどっぷりとつかった青春時代

大学は音楽大学に通っていました。いわゆる『音大』です。のだめカンタービレの世界です。
音楽が好きで勉強が嫌い、中学・高校学校でも、クラブ活動に専念という名で勉強から避けていたので、将来のことを考えると必然的に音大に進学して将来は音楽家。という道を考えていました。ところが、周りはそれを許しません。みんな自分が勉強嫌いのことを知っていたので、勉強から逃げるために音楽の道を目指すことがバレバレでした。「音楽家なんて飯食われへんで」とか、「3歳からピアノやってないとアカンで」などなど。たまたま中学校の吹奏楽部で楽器を始めて、勉強せずにクラブばかり、そもそも楽器なんてそんなに上手でなかった人間が、勉強から逃げたいがために音楽の道を目指すことがバレバレで誰もが反対でした。

みんなに反対されるとどうなるか。断然、音楽の道を目指したくなります。有名な音楽家の話を見たり聞いたりしていると、やはり親戚一同から大反対されたり、怒こった親に井戸に宙吊りにされた指揮者がいたりと、みなさん大変な中音楽の道を目指してきたようです。
仲の良かった友達から、『私も音大行きたかったのに、親に反対されていけなかったから、あなたはズルい』なんて、変な切れられ方もされましたが、無事わがままを通して、音大生になれました。

音楽大学は面白いところでした。一歩校舎に入れば、教室の窓から聞こえるピアノの音、歌う声、楽器の音が聞こえます。防音の練習室なので本当は音漏れないはずなのに、きっと上手に弾けるようになったうれしさで窓を開けて練習していたのかもしれません。

授業も音楽関連がいっぱい、楽譜を書く授業や音楽の歴史の授業があり、当然楽器や歌、ピアノやオーケストラの授業と、音楽好きなものにはたまらない世界でした。

例えば、1時間目アンサンブル、2時間目吹奏楽、3時間目オーケストラといった一日がクラブ活動みたいなもの。さらに、大学のサークルでもオペラや吹奏楽に入り、昼休みや放課後はみっちり練習。練習が終わってからも、近くの喫茶店で終電まで音楽や次のコンサートについて語り合う。そんな音楽にどっぷりとつかった青春時代でした。

そんなに忙しかった大学生なので、あんまりアルバイトはできませんでした。上記のように時間がないので、短期でガツンと稼げる工事現場や引っ越し作業の仕事を、練習のない時期集中的に行っていました。その知識と経験は、今の会社で工事関係の仕事をするときに大変役に立っています。また、社会人になってから1年間は、音楽の道で行こうとしていて時間の融通の利きそうな運送業の仕事を、個人請け負いでしていましたので、その時のシステムも今の会社に取り入れています。

音大生の「お仕事」とは

音大生独特のアルバイトとして、『お仕事』というのがあります。何かのコンサートで、プロの奏者が都合で出演できなかった時に替わりに演奏するというもの。大学生でありながら、プロのオーケストラのメンバーでお客様の前で演奏する。また、式典やレストランで音楽を添えるアンサンブル。残念ながら自分はあまり楽器でのお仕事は少なかったのですが、声楽も習っていたので、合唱やミュージカルでよく声をかけていただきました。男声は数が少なかったので、重宝されました。

ところでこの『お仕事』というもの、「アルバイト」とは、まったく違うものでした。例えば友達との会話の中で、「今度の日曜何してる?」といった話になったとき、アルバイトですと「明日バイトやねん」とさらっというのですが、お仕事となると「明日はお仕事入っています!」と、その瞬間だけ声のトーンが上がって誇らしげに胸を張って答えます。音大生にとって、プロの舞台でプロとして演奏の仕事をするのは、アルバイトとは全く違うものでした。

だから音大生をおすすめします

『お仕事』が入ると、みんなとても準備をします。曲の練習を何時間もしたり、それ専用にレッスンに通ったりして本番の日を迎えます。声をかけてくださるのは、ほとんど先輩であったり自分の師匠であったりするので、だれよりも早く現地入りし、準備し、緊張の本番を迎えます。うまくいけば再び声をかけてもらえるかもしれない。もしかしたらそのままプロの道に行けるかも。でももし失敗したら、もう二度と呼んではもらえない。当然プロの道なんて途切れてします。そんな想いで頑張っていたと思います。

もらえるギャラは大した金額ではなかったと思います。せいぜい1万円ほど。たまに2万円とか3万円とかもあったと思いますが。それでも会場までの交通費、レッスン代を考えると、完全に赤字です。費やした時間を時間給に換算するとどうなるのでしょう。

でも、『お仕事』を通して、たくさんの大切なことが学べました。依頼者(=クライアント=お客様)の事を一番に考え、認めてもらえるように一つの仕事に対してとことん準備をし、完璧なものを作り上げて本番に持っていく。この精神は今自分が仕事をしている中でとても生きています。今では会社として、すべてのお客様から頂く案件すべてに対し、丁寧に準備をし、仕上げて持っていきます。

企業の採用担当の方、もし、音大生が就職希望で来たときは優先して採用してください。きっとすべての仕事に対し、力いっぱい頑張ってくれると思います。お子さんが音大に行こうと言い出した保護者の方。ぜひ、反対せずに夢を叶えさせてください。きっと将来、いい人生が送れますので、ご安心してください。

代表取締役 中川晋一

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