システムの冗長化について

冗長化とは

パソコンやネットワークが故障して止まってしまうと、たちまち仕事が止まってしまいます。大切な用事や、今しなければいけない作業があるときに限ってトラブルは起こります。パソコン等の機器については買い替えれば元に戻りますが、それでも注文して手元に来て、使えるように再度設定をしようとするとあっという間に数日が過ぎてしまい、その間の仕事が止まったままになることも。

インターネットや、ネットワーク回線が止まってしまうと、社内すべてのパソコンでのメールやネットを使った業務も止まってしまいます。こうなると社員一人の影響だけではなく、会社全体の業務が止まってしまうので甚大な被害につながりやすいです。

また、プリンターやサーバーといった情報機器全体に同じことがいえますが、電気店やネット通販ですぐ手に入る商品と違い、業務用情報機器は発注から納品まで時間がかかることが多いため、復旧までかなりの時間がかかり、ビジネスに与える影響がさらに増えることとなります。

機械なのでどうしても故障のリスクは避けて通れないのですが、万が一機器にトラブルが発生しても最小限のリスクに届ける方法の一つとして、『冗長化』という手法があります。単純に説明すると、『予備の機械を用意する』ということですが、「機械が壊れてから入れ替える」のではなくて、機械が壊れた時、『そのまま次の機械で業務を進め続ける』ことができたほうが安心です。 “機械はいつか壊れるもの” “壊れることを想定したシステムを組む”ことが大切です。

「冗」という文字には、“いらない” “余計” “無駄”の意味で、それが長くなる『冗長』という言葉には、“無駄が多い”こと、“重複している”こと、“必要以上に長い”ことになります。国語的に考えると無いほうがよさそうですが、ITシステムにとっては必要不可欠です。機器のトラブルが起こった時に備えるものや、データの喪失に備えたバックアップ。負荷が集中した時に備えて大きめに組まれたシステムなど『無駄』ではなく『余裕』を持たせるために必要なものです。

パソコンの冗長化

タイトルは書きましたが、あまりパソコン単体での冗長化は考えることは少ないです。(パソコンの内部の部品、例えば、ハードディスクドライブや、電源装置、冷却ファンといった部品を二重化して障害に備えるといった工夫はされることはありますが)しかし、複数台のパソコンを常に用意しておき、トラブルが起こった時は別のパソコンで利用できるようにしておけば、万が一の時に安心です。ところで、複数台のパソコンの用意といっても、単純に従業員数×2台というわけではありません。オフィスのパソコンをできる限り同じ環境で運用し、データもサーバーやクラウドシステムに入れておけば、トラブルが起こった時には他の人のパソコンを利用して作業を進めることができます。もしくは、職場内に予備のパソコンを1台用意しておくだけで事足ります。

最近の業務用アプリは、サブスク形式が増え、常にwebからダウンロードして使うものや、web上で操作できるものが一般的になりつつあります。各アプリのアカウント情報(ユーザー名、パスワード、ライセンス期限)といったものをすぐ取り出せるところに用意しておくことで、急なパソコンの切り替えにも迅速に対応することができます。

サーバーの冗長化

大切なデータをパソコン上に保管するのではなくサーバーに保管することは、機械のトラブルに対応するだけでなく、情報の共有化が図れて社内の仕事効率化へとつながります。ところで、全社員・全データが入っているため、今度はサーバーにトラブルが起こった時は大変です。

サーバーの冗長化には、2つの側面があります。まずは、機械内部の構造です。
一番壊れやすい部品として、ハードディスクドライブ(HDD)があります。年々高密度化・大容量されているうえ、超高速で回転するためにHDDの故障リスクは常に付きまといます。そこでサーバー内部では、HDD2台に同じデータを保管するミラーリングという方法があります。万が一HDDが壊れてしまったとしても、もう一台のHDDにデータがあるので作業をストップする必要はありません。さらに、4台以上のHDDを組み合わせて、耐障害性と、動作速度の向上を図るRAIDという技術もあります。
その他サーバー内部の電源装置や、冷却ファンを冗長化することで、強固なマシンを作り上げることができます。

サーバー自身の冗長化として、サーバーを2台用意することも推奨します。いくら壊れにくいとはいえ、機械なので壊れる可能性はあります。サーバーに入っている情報を、常にもう一台のサーバー(冗長化サーバー)にコピーするようにします。そうすることで万が一サーバーが壊れた時に、冗長化サーバーに切り替えることで、データの損失やシステムの運用を止めることなく業務を進められます。

そして、BCP(災害対策)として、できれば離れた場所に設置することを推奨します。例えば、会社にメインのサーバー、支店に冗長化サーバーと設置することで、万が一本社に災害が起こったときの対応も可能となります。支店がない場合は、設置場所を社長の自宅としても構いません。また最近増えてきた、クラウドサーバーを冗長化サーバーとすることも有用です。サーバーの機械的なメンテナンスの必要がなくなることと、自宅からサーバーのデータを操作することができるので、最近増えてきたテレワークに対して、非常に都合がいいです。

ネットワークの冗長化

最近はトラブルが減ってきましたが、それでもネット回線の不具合は年に数件聞くことがあります。インターネットブラウザやメール以外に、今では当たり前になってきたクラウドシステムやweb会議システム、またサブスク管理のためにネット経由で認証を取らないと立ち上がらないアプリなど、インターネットが止まってしまうと甚大な被害が生まれる可能性があります。昔から大手の企業では、通信回線の冗長化は当たり前でしたが、今では中小企業でも必要なものとなっています。

ネットワークの場合は、社内ネットワークが特定の場所でトラブルが起こった時にネットワークを切り換えるローカルネットワーク内の冗長化と、外から建物に入ってくるネット回線の冗長化の2種類があります。どちらもL2スイッチという機械を利用します。

ネット回線は2回戦の契約が必要となりますが、できれば別の会社で契約したほうがいいでしょう。というのは、メインの通信会社にトラブルが起こった時、冗長化された回線の方も同じ通信会社ですと意味がなくなるからです。電力系やケーブルテレビ系といった別の回線で契約したほうが効果的です。

このように、業務で使うIT機器を万が一に備えることで、トラブルの時に業務を止める時間をできるだけ減らすことができると同時に、災害対策も図れるために、ぜひ冗長化できる部分がないのかどうか、会社のIT環境を見直してみてはいかがでしょうか。

代表取締役 中川晋一

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